アーサーおじさんのデジタルエッセイ562

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第562 HEAD


 面白いことばがあるので紹介したい。
航海用語である。
ただし私には詳しい世界ではないので細かくは説明できない。
つまりどのくらいの範囲・規模で使われているのか?
あるいは今は別のことばが一般的なのか、とか言うことである(用語集でも見ないことが多い)。
 船の「トイレ」を何と言うのか、ということである。
山登りでは「お花畑」ということばがあると聴いたことがあるが、これも実際に使ったところを知るわけではない。
スラングですね、業界スラング。
話を戻す。
船のトイレを「Head:ヘッド」と呼ぶ話。

 何故か?
これがすごく面白い。
まず、昔の木造の海賊船などを思い浮かべて欲しい。
大英帝国の無敵艦隊でもよい。
船長室がどこにあるか思い出して欲しい?
今とは違う。
必ず船尾である。
ここに後ろ向きの豪華な窓もある。
トイレと船長室のこの二つは密接な関係がある。(しかし現代の船長室なら先頭で進行方向に向かった窓が彼の梶取りの仕事場だろう)
 当時(?)は、長い航海では船員は風呂にも入れない。
臭い。
トイレも臭い。
従って船長室は風上にある必要があった。
ところで風上は船の後方なのだ。
タバコの煙を吐いたら、前方に流れていくのが正しい絵である。
帆船の動力はほとんど後方から来る自然風である以上、髪や衣服が靡くのも、進行方向である前方となる。
お分かりだろうか?従って最も風下は船の先頭である。
あの軸先に彫られた女神のすぐ下あたりに大きな穴が開けられており、そこにしゃがんでコトを済ませる必要があった。
広い海が巨大な便器となる。
船長室に迷惑を掛けることなく、コトが片付くわけだ。
だからこの場所を「頭:ヘッド」と呼んだ。
トイレはないが、トイレとなる場所がヘッドにあったのだ。
そういうわけで後日、自力走行をし、「風を切って進む」ようになった動力船では、船長室は逆に前方の見晴らしのよい場所に変わる。
 ペリーが乗ったような、半動力船はどうだろう。
もちろんまだ主力は自然風だから、船長室は後方にあったのであろう。
かくして現在も、船のトイレを「ヘッド」と言う。

HEAD : Uppermost corner of a sail, or the toilet. (Glossary of Terms
and Sailing Vocabulary)
  

               
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」  2011年10月15日更新


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