アーサーおじさんのデジタルエッセイ445

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第445 幸福の調教・PTSD


 ニューヨークのホームレスを抜け出た人物が、それを脱出するのにものすごいエネルギーが必要だったと述懐していた。
怠惰になった体は、意識に関係なくいうことをきかないからだ。
人の人生は、意識と、体の論理との両方を制御しなければ成り立たない。
つまり意識が身体のリーダーにはなれない時もあるからだ。
恐ろしい経験の後、そこから脱出できるのは、まず知性だけに出来ること。
身体の奥ではその恐怖を覚えてしまったので、たいへんやっかいになる。
恐怖は「繰りかえされること」として体が反応し、身構えるからだ。
ここから逃れるのも身体の調教が必要となる。
意識がしっかりと身体に寄り添い、信頼を勝ち得なければならない。
それはアザラシやイルカの調教のように辛抱強い努力を要する。

 PTSDとはpost traumatic stress disorder(心的外傷後ストレス障害)のことだが、ここで意味するものはマイナスばかりではないのではないかと思う。
私は昨年の2ヶ月の体当たりで暮らした海外の深い経験のあとの、帰国後の文化的な空虚を感じている。
私にはpositive traumatic stress disorder(心的幸福後ストレス障害)があるらしい。
今、思い出を忘れられない身体を、泣きながら調教しているところである。

             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2009年4月26日更新


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