アーサーおじさんのデジタルエッセイ419

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第419 雪道での愛


 フランツ・マルクの絵に不思議なものを発見した。
「世界を前にする犬」という題で、遠くを見る白い犬が表現主義風に描かれている。
作者は自分の犬を連れて散歩した時に、斜面で一緒に遠くを眺める犬を不思議に思って、「その頭の中で何が見えているのだろうか」と感動したらしい。
 私にも同じように解けない感動がある。
地方都市で珍しく雪の朝を迎えた。
一面に積もっている。その時に通勤のバスの窓から見た。
 すっかり雪に覆われた歩道を四匹の犬が一列になって歩いていた。
なぜ四匹もの鎖を着けていない犬が歩いていたのか。
野良犬ではなく、それなりの種の名前のある犬達である。
親鴨、小鴨を思い出して欲しい。大きな白い老犬が先頭を静かに歩く。
その足跡を辿るように雪の中を慣れない足取りで、三匹の小さな犬が歩く。
ところが親子ではない。
種類が違う犬達なのだ。
最後部の朕のように小さな犬は、雪に足を滑らせる。

一人が遅れた。その時である。
先頭の老犬が立ち止まり振り返った。
そして、じっと朕の姿を見ているのだ。
朕はゆっくりと復活し、とまどいながら再び歩み始めた。
それを見届けると老犬は再び前を向き、歩き始めた。
深深と雪は降り、物音はしない。
赤穂浪士が雪の夜に並んで行進する光景を思い浮かべた。
私はこの老犬の姿に深く感動した。
そこには間違いなく静かな愛があると信じられた。
この風景はどういう風に解釈しても夢のようで説明しがたいものであるに関わらず、しっかりと私の人生を支えてくれる記憶の一つである。


             ◎ノノ◎。
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2008年7月12日更新


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