アーサーおじさんのデジタルエッセイ400

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第400 けったいなおばちゃん


 ロートレックは不思議な人だ。大抵の肖像画はそのモデルが実名で分かっており、けっこう時間を掛けて描かれているはずだ。
それにしては、モデルの意地悪さや、気になる品性が彫り出されている。
踊り子や娼婦が多いが、美化することもなく、丁寧に「その人」として描かれる。
だから現代の私たちが見ても、その息遣いや反応を、まるで眼前に現れた人のように感知することが出来る。
 朝に寄ることの多いパン屋で、レジは三つで、一列に並んだ私が自分の番になると、横から隣のレジに割り込んだおばちゃんがいた。
確かにさっきまでは大勢が一列であった。
「むっ」とした私は「こちらに並んでるんですが」と彼女を制した。
すると鋭い流し目で「あら、そうなの?」と疑り深い声を演出しながら引っ込んだ。
「知っててやったなおぬし」と思った。
こんなおばちゃんがいるんだ。

勝手ながら、私はその顔つきで「やりそうだ」と判断していた面がある。
 美術展の催事をチェックしていたら、そのおばちゃんの肖像が出てきて驚いた。
どこかで会った顔だと思っていたが、こんなところにいたんだ。
なんと19世紀から頑張っていたんだ。
しかも実は、その朝のカフェで、同じようなロートレックのモデルを「こっちよ、こっち!!」と呼びながら、大声で眉に皺をよせて喋り合う常連の客であったことを、後日知った。

             ◎ノノ◎。   
             (・●・)あ、400!

         「また、お会いしましょ」  2008年3月2日更新


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