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第2話 団塊のシンクロナイズド


ボーリングのレーンのように長い地下通路の向こうに、カバンが投げ出され、壁にもたれている人間の姿が見えた。また、酔っ払いかなあ、と近づくとごく普通の中年サラリーマンが蹲(うずくま)っている。

 私は立ち止まると「何かありましたか?」と声をかけた。 「いやあ、酔っ払っただけです」と返事。「平気ですか?」ともう一度言うと、「手を貸してください。立ち上がりますので」という。OKとばかり私は彼の手のひらを握り足を踏ん張った。

 すると足音をたてて走って来たもう一人の男が後ろから押し上げた。ニコニコしている。仲間かなと思ったが、立ち上がった男がペコリと頭を下げ地下鉄の駅へ歩いて行くと、二人で彼をしばらく見送る形となった。「なんとか大丈夫そうですね」と、私は男と顔を見合わせた。

 今度は彼が「なんかもう、"ひと事"ではないもので・・」と。3人とも同じ団塊の世代のように見える。

 「せめて、声をかけると精神的に救われる、と思うものですから」と私。「落ち込んでいたら、気の毒ですからね」。「本当ですね」と、二人は歩き、どうも分かれ道らしい牛丼屋の角で「では、失礼します」と別れることとなった。しんみりとした暖かさ。

             ◎ノノ◎
            (・●・)

「では、またお会いしましょう。」 2000年3月8日


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