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第3話 博多の街で


もうだいぶ前のことになるが、お得意からの帰りに、タクシーに乗った。同乗の仲間と「つくづく、もう少しお金があればねえ」と話の流れの中で喋っていた。 風が冷たい日だった。カーブの度に体をぶつけながら、やけぎみに「金」の話が続いた。

 大きな通りに入ったところで運転手が口をきいた。「お客さん」。 「お客さん。金はあったらいかんです。」 ん? 市井の人々のお説教か? あるいは愚痴か? と思ったら話は続く。

 「お客さん。金があると楽しみがなかとですよ」 「金があると、スーパーで安か"刺身"が、得したと思うですか?・・”本日の広告”の品ば買うて、あーおいしか刺身たい、と喜ぶですか?」 沈黙。

 「金が無いけん、なんにでも嬉しさがあるとですよ」 うーん。 

 「運転手さん、ほんとですねえ」 真理は単純でなく、人生は一様ではない、と思ってはいたが実感があるなあ。

             ◎ノノ◎
            (・●・)

「では、またお会いしましょう。」 2000年3月16日


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