アーサーおじさんのデジタルエッセイ174

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第174話 トゲだらけの素敵な人生


人生はささいなことの積み重ねである。

新しく買ったシャツの端に糸が飛び出ていれば、外出してても落ち着かないものだ。そんな程度ならまだいいが、小さな血管に脂肪が詰まれば、心筋梗塞やくも膜下出血を起こし、死に至ることもある。

小さな事柄が世界から分断されているのではなく、大きく影響しあっているからだ。

田舎の夜空の満天の星を眺めていると、涙が出てくることがある。

なーんだ、やっぱり小さいなあ。

会社や、消費税や、クライアントのいやな性格に悩むことはないなあ、と突然悟ることもある。

しかし、指の小さなトゲの痛さのせいで会議がそぞろにはなるし、挨拶をしない仲間にムカっと心が冴えない時間を過ごす。

あるいは、あの人に嫌な思いをさせたのでは?と眠れない日も。

仏教では「人身得がたし(?)」とか言って、人間に生まれるのはチョー難しいのだと教えてくれる。

何万億回もの数え切れない程の輪廻を経て、人の命にたどり着く、という。それを思えばこの小さな人生も有難い。

酷い仕打ちも(たまには)受けるけど、1930年代のユダヤ人収容所ほどではない。冷蔵庫の缶ビールも飲めるし、たまには人からプレゼントも受け取る。

こんな人生がどんなに希少かは、十分考える価値がある。

こんな人生を、怒鳴りながら睨み合いながら、過ごすのはよそう。やさしい声を掛けて生きよう。味わおう。

              

             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2003年8月21日更新


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