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日本渓流釣名人会釣行記

第一話 富山県神通川支流長棟川の大池谷と新潟県上越市桑取川

釣行日 平成13年4月30日〜5月2日

同行者 柴田 その娘佳代子

釣 果  ゼロ

 会社から帰宅する佳代子を待って、4月30日夜、富山県神通川支流、長棟川の大池谷へ向かいました。5月3日からの連休には釣り人が大勢来ることが予想されるので、その前に一番乗りをしたいという魂胆です。昨年のゴールデンウィークも、ほんのちょっとのところで他の釣り人とかち合うところでしたが危うくセーフで、良い釣りが出来ました。その為今年は、二日ほど早く行くことにしました。もっと早いと、雪で現場まで到着できるか?や、雪代水が多くて釣りにならなかったりします。

 現地へ着いて、車からモンキー(小型バイク)二台を出して釣り仕度をしていると、二人乗りの4輪駆動車が我々を見ながら通り過ぎて行きました。自分と佳代子の二人分の用意をするので、どうしても遅くなります。もたもたしていると又一台の4駆が、通り過ぎて行きました。今度は中年の一人乗りですが、嫌な目つきで睨むようにして通り過ぎました。二台とも富山ナンバーです。しばらくして、ようやく用意が出来た我々も出発しました。私の車は4駆ではないので凸凹の林道を上がって行けませんが、先に行った車はゲートまで行って、そこから先は行けないはずです。その点こちらはバイクなので、ロックしてあるゲートの脇を通り抜けられると言う期待があります。

大池谷地図

 桧峠のゲートは開放されていて二台の車の姿は見えません。半分あきらめながら先を行くと、林道がなだれ雪で一部ふさがれていて二台の車は進めずに止まっていました。車から降りて近づく我々を見ています。先程我々の脇を通り過ぎて行く時、何も挨拶無しだったので、今度はこちらが無視してやりました。モンキーでなんなく雪道を越えて先を行きました。「ああそうか、彼らは山菜取りに来たのかも知れない。地元のナンバーだから、ゲートが開いているのも知っていたんだろう。それにしても中年の4駆の後ろには自転車が積んであった。自転車でどうするんだろう。まさか大池谷迄、こいで行くわけでもあるまいに。片道10?程有るだろうに。」と自問自答しながらモンキーを走らせました。もしかして自転車で追いかけて来るとしたら、先を急がねばなりませんが、前を行く佳代子のモンキーののろいこと。普段は乗っていない上に免許も持っていません。「危険なので自分にあったスピードで走りなさい。決して急いだりしないように! お父さんは追い抜いたりしないから」と、言い聞かせているので急がせるわけにはいかないけれど、私の気持ちは焦ります。

 何はともあれ後ろからは誰も来ずに大池谷に着くことが出来ました。驚いたことに対岸に渡る橋が出来ていました。橋を渡って佳代子にアイゼンを履かせました。念の為、私もアイゼンを履いて山肌をへつり始めると、「靴が脱げちゃった。」と佳代子。仕方なくもう一度平らなところまで戻って、靴の紐を結び直していると、「お父さん、誰か来るよ。」と佳代子が言うので、振り返ると中年が河原で何かやっている。私が近づいて「ここまで良く自転車で来ましたね。山菜取りですか?私達は釣りで大池谷に入ります。」と言うと「釣りで大池谷に入る。毎年一番乗りで大池谷に入っている。」まるで自分が大池谷に入るのは当然の権利とでも言わんばかりの言い方です。「私達が先に着いて大池谷を釣るつもりですが、せっかくあなたも来たのですからあなたはシモ(下)を釣って下さい。私達は竿を出さずに一時間歩いてガレバの少し手前からカミ(上)を釣ります。」と言うと仕方なさそうに承諾しました。私が「後から追い越しますからどうぞ先に行って、釣っていて下さい。私達は脇を通って上へ出ます。」と言うと、彼はさっさと谷に入って行きました。

我々も足固めをして行こうとすると、今度は先程の若い二人組が近づいて来て何も言わずに追い越して行こうとしましたので、呼び止めて「私達は大池谷を釣ります。山菜取りですか?それとも本流を釣るのですか?」と聞いてみましたところ、大池谷を釣るとのこと。「大池谷は先程来た人と既に川割りも決まっている。小さい沢なので三組も一緒に入るのは無理です。」と言うと「無理と言われても雪代で、とても本流には入れない。」「それなら他の川に行って貰うしか有りませんね。渓流釣りは先行者優先なのは御存知でしょう。」「ポイントを分け合いながら三組でやれば良いじゃぁないですか。」随分強引な言い方なので「今までどこの川へ行ってもこんな事はなかった。先を越されれば残念だけれども帰って、他を当たったものだ。どんな渓流釣りの本でもそれがマナーだと、書いて有るでしょう。見ての通り、こちらは女連れです。皆さんと一緒になど出来るはずがない。石に引っかけたり木に絡んだりの釣りです。既に川割りも終わって、先の人は釣り上がっています。あなた方が帰るか、私達が帰るかしかありませんけれど、どうしますか?」「せっかく来たのですから我々は帰りません。先に行った人を見つけて三組で相談しましょうよ。」「相談した後、又何組か釣り人が来たら又そこで相談するつもりですか。?それじゃ釣りにならないでしょう。とにかくあなた方は帰らないんですね。」「帰りません。」「仕方有りません。私達があきらめます。」と言って山を下りて、帰り仕度を済ませた頃、先程の二人が戻ってきて「私達は本流を釣ることにしましたから大池谷を釣って下さい。」「今更もう良いですよ。帰り支度も済んだことですし。」「さっきは勝手なことを言って済みませんでした。気分を直して釣って下さい。謝りますよ。」との事。佳代子もその気がないようですし、「もう決めたことですから。」と言ってその場を後にしました。モンキーで山道を登っていくと「お父さん、あの人達まだこっちを見てるよ。」と佳代子が言いました。我々の姿が見えなくなるまで、谷に入るのをためらったようです。

 帰りは焦ることもなく景色をゆっくり見ながらモンキーを走らせました。人里離れた手つかずの山々の景色が眼前に広がっていました。先を走る佳代子のモンキーも、気持ち良さそうに走っています。来る時、あんなにイライラした佳代子の走りも、「うまいもんだ。やっぱり乗馬をやっていたからかな。」などと、思えるようになりました。案の定、途中で二〜三台の車とすれ違いました。あれ程素晴らしかった大池谷も、もうおしまいです。釣り人がこんなに増えてしまっては秘境ではなくなりました。

北陸道を走って、上越市の桑取り川へ移動しました。雪代の為、水が太くてとても釣りは無理でした。先ずはテンバ(テントを張るところ)を見つけ、車をすっぽり包むようにシートを張りました。川の近くの平らな良い場所が見つかって一安心です。釣りは無理でも山菜なら取れるはずとばかりに、山道を上流に向かいました。コゴミが至る所に有ります。道すがら、タラの芽を見つけて二人掛かりで採りました。タラの芽は、木そのものに棘が有って一人が木を倒しててっぺんを低くしてやり、もう一人が低くなった枝先の芽を採ります。しばらく行くと山道もなくなり所々に赤いリボンが結んで有りました。地元の山菜取りの人が付けた目印です。目印のリボンを頼りに登って行くと、かたくりの花が一面に咲いている場所へ出ました。足の踏み場も無いほど紫色の花が群生していました。小さな沢で「お父さん、これワサビだよね。」と佳代子が、沢ワサビを見つけました。まわりを見るとあちらこちらにワサビが白い花を咲かせています。沢の水で洗って持ち帰りました。テンバに戻ってからは佳代子の仕事ばかりです。さすがお母さん仕込みで、料理の腕を振るってくれました。東京で買ってきた焼き肉とビールで先ずは、乾杯。その後、山で採った蕗のとう、コゴミ、タラの芽、ウドの天ぷらは絶品でした。二人で今日の一日を語り合い、「今日は幾ら飲んでも文句を言うお母さんはいないんだから、いっぱい飲むぞぉ」と私。「そうだ、お母さんなんか恐くないぞー」と、佳代子。 

桑取川地図

 楽しく宴会をやっているとポンプ小屋の管理をしている爺さんが、「どこから来たんかい?」とバイクを止めて、話しかけてきました。「東京からです。」「あんたら昼間、神社のところであった人達じゃね。こんなところへ来て面白いんかい。都会の人はわからんわ。」「夜空を見ての宴会は東京では味わえません。今夜は最高です。」昼間、山菜の無人販売所で会って、少し話をした爺様です。バイクの荷台にウドが山ほど積んであります。「神社の無人販売所へ持って行くなら、少し分けて下さい。そうだ、東京へお土産にしますから、半分売って下さいよ。」と少し強引に頼みました。荷台の半分のウドを袋に入れて貰い「おいくらでしょうか?どうぞ言って下さい。こちらから無理に頼んだのですから、高くても文句など言いませんから。」爺様少しお困りのよう。佳代子も「お父さん、酔っぱらって気が大きくなって、大丈夫かな。」と心配そうな顔。爺様テレながら「そうよのう。300円もらおうか?山に生えているものだから、金など貰っちゃあ悪いんだけれど。」 私はさすがに困って「すいません。400円にして下さい。」

爺様が帰った後「お父さんひどいよ。あんなに貰って400円はないよ。いくら安く言われても1000円位は払うものよ。」「だって喜んでいたじゃないの」と私。今の時期は午後6時を過ぎてもまだ明るい。暗くなる直前に一台のバイクが山菜をいっぱい積んで通り過ぎて行きました。それが最後でもう、誰も来ませんでした。

 翌朝はぐっすり寝て、佳代子が作った朝飯を食べていると何台かの車が通り過ぎました。こんな山奥でも入れ替わり立ち替わりで車が入って来る時代になり、驚かされます。後片付けをして村営の温泉「くわどり湯ったり村」でお風呂に入り休憩所で昼寝をしてから帰路に就きました。この温泉は入浴料500円で大きめの休憩所が三カ所有り、持ち込み自由なのでお弁当や缶ビールを持ち込み、各自楽しんでいました。最近はこういう施設があちこちに有るので我々釣り人にも助かります。特にここはカラオケの設備が無いので静かに休憩できました。帰路は上越市の「海鮮市場」に寄り、日本海の海産物を見て、大きな鯛を一匹土産に買いました。780円でした。家へ帰って半身を刺身に、残りを鯛飯に、頭を潮汁にして食べましたが大変美味しかったので、もっと買って来れば良かったと家族で話しました。それに山で採った山菜はしばらく我が家の食卓を賑わしてくれました。 今回は釣りは出来ませんでしたが娘と貴重な時間を過ごす事が出来、満足しています。

次回をお楽しみに!


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 最終更新日 2002年4月20日