アーサーおじさんのデジタルエッセイ589

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第589 まっすぐなキューリ、症候群


 もう何十年も以前から、農業経営では「美しい農作物・症候群」がジレンマになっている。
つまり、農作物の価値の評価がその栄養価や成長、そして美味しさだけではなく、見た目の形や大きさ、色で決まるということ。
とりわけサイズと形状は重要で、いわゆる取引上の主要ポイントとなることである。
これは当然、市場に乗せるためにSMLなどと、ランク付けをする必要があるからであり、また店頭でお客様に「選んで」いただくためである。
お客様は味見ができないから「サイズと美肌」を選んでいるだけなのである。
 さて、20年ばかり以前、福島の某JAに呼ばれ、そのついでにある試作品のネーミング案をその場で出してくれと言われたことがある。
マーケットが引き受けない「曲がったキューリ」の再利用のために、キューリのシャーベットを試作したというのだ。
私は動機となる消極面ではなく、農業課題のポジティブなマニフェスト(表明)が、まさに重要だと考えていたので、女性好みの華麗で爽やかな味のシャーベットに『曲がったキューリ婦人のシャーベット』とのネーミングがふさわしいと説明した。
さ、どうなったのか?
JA幹部が妙な顔をしたのを覚えているだけだ。

 曲がった野菜にも、正当な価値がある。
それは人為的ではなく、「大自然」の法則を素直に表現しているからだ。
自然に生きて育っている答えがそこにはある。
「社会」の都合、不都合で生まれた訳ではない、と思えるのではないか。
しかし産業は自然も「曲げ」て、型通りの「仕上がり」を望んでしまう。
 翻って人間はどうか。東大出の美男ばかり、AKBやミスユニバースばりの美女ばかりが、価値があるだろうか。
それでは社会も成り立たないではないのか。
整形かサプリメントか分からない意図的な美男美女が並んで「売れて」いるタレント世界を見ていると、スーパーに並んだキューリを思い出す。
三本ばかり選ぼうと考えても、大きさも色艶もプラモデルのように均一なので、戸惑うのである。

               
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」  2012年5月12日更新


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