アーサーおじさんのデジタルエッセイ588

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第588 脳神経へのひびき


 歯医者に行く。
大きな大学病院に通うわけである。
昔、詰めた歯の銀冠が外れてしまったのだ。
ここでも待つのは当たり前だが、予約してからはそれほどでもない。
最初は問診表を出すのだが、まず口腔内科の医師が診断するところから始まる。
ここで、いわゆる虫歯か、詰めものの修復か、それとも歯以外の問題かなどによって各専門の医師に振り分けられるのである。
そう、症状に合わせて担当が違うので、工程が複雑になる。
 椅子に座っている間はすることもない。
長い時間なら書物に没頭することもできるが、短いと分かっていればそれも落ち着かない。
暇つぶしの壁のモニターも見飽きた。
だって映し出されるキシリトールの説明ももう知っている。
それとなく響いていた屋内のアナウンスにも認識が至るようになると、ふと面白いことに気がついた。
なんだか、崇高だったり、恐ろしく感じたりするのである。
もし、これがメルヘンの世界のアナウンスだったら何だろう、と考える。

 つまり、である。
「クラウンの○○先生、二階受け付けにお電話です」
 うん、クラウンとは王冠であろう。
「ソウギの○○先生・・」
 ソウギとは葬儀に違いない!
「シシューの○○先生・・」
 うん、これは詩集ではなく、死臭ではないのか?たいへんな先生もいるものだ!」
 たかが歯科ごときに、死臭や葬儀が登場するとは。他にもいろいろ。
「航空の○○先生・・」
「嬌声の○○先生・・」
 どの先生も勉強して技術を磨いて、専門となったのだろう。
立場に上下は無い。
しかしこの「耳の響き」ではずいぶんと損得がある。
我々の耳にはアナウンスのたびに「王室」が頭に浮かんだり、「ゾンビ」が現れたり、と忙しいのである。
 ちなみにクラウンはクラウン・ブリッジ科、ソウギは総義歯補綴科、シシューは、歯周病科、コウクウは口腔外科、キョウセイは歯科矯正科である。
これはパンフレットを読んで分かったのだ。

               
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」  2012年5月5日更新


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