アーサーおじさんのデジタルエッセイ580

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第580 スズメの木


 近所の緑道を歩いていると、灰色の空をバックに樹木の黒い影が立ち上がる。
その中でシルエットばかりではなく、不思議なざわめきを伴う木が何本か存在することが分かる。
 そう、都会では空気が冷えて来る冬の夕方、スズメが決められたと思われる樹木に戻り始める。
それはとてつもない大家族である。
その木ばかりがものすごい音を立てる。
『ジュンジュンジュジュジュジュンジジジュンジュ・・・』
 と、チューニング中のラジオのボリュームを上げたようである。
 これは世界の各地でも同様の現象なのではないだろうか。
20年前、イタリアの冬、夕方の空に恐ろしい光景をみた記憶がある。
天空にイナゴの大群のような渦が現れて、すごい速度でかき混ざり、陰鬱な映像が展開された。
最初、一体何の異変なのだろうかと怪しんだ。
悪魔の乱舞のように暗部がうごめき変化する。
しかも右へ左へと激しく移動するのである。
それは悪魔でも蝙蝠の群れでもなく、スズメの大群であった。
やがて街路樹にぶら下がり、豊かな果実のように『スズメの成る木』が出来上がる。
壊れたブラウン管のような唸り声を発する。

 さて、その緑道の木であるが、私は立ち止りスズメの姿を探してみた。
けれども暮れた空には黒い枝枝が見えるばかりでスズメの姿はない。
何分も観察したが葉とそれを区別することが出来なかった。
うまく隠れているのだろうか。
では、なぜわざわざ大騒ぎで鳴いているのだろうか?
あんなにも。
 人を茶化しているのか。
トリックなのだろうか。
(写真は本文とは無関係)

               
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」 2012年3月10日更新


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