アーサーおじさんのデジタルエッセイ567

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第567 WWW.ダイアゴン横丁


 学生時代に一度だけ、N岳に登ったことがある。
と言っても山頂付近まではバス・車が使える。バスに乗ると登山道はさすがに険しく狭く、あちこちで乗用車がオーバーヒートして沿道に停車している。
それを避けながら登るバスも大変である。ウンウン言いながら、何時間もかかって上方へ進む。
だんだんと世間から遠ざかり、雲の上の世界に変貌する。
いったいこの上に人間が何人いるんだろうか?
不安にもなってくる。
「終点です」と言う。
霧の中で目を凝らすと、な、なんと広場は登山姿の人の群衆である。
売店も茶店もある。
そこだけ見れば地上の観光地並みである。
嬉しいような、がっかりしたような。
こういう様子は、単なる想像でも地図でもつかめるものではない。

 逆もある。地図で堂々とした山だからと特別な装備もなく、日常の靴と手提げバッグでI山に登り始めた。
のどが渇いても頂上でコーヒー店にでも入ればいいと思っていた。
なんともすごい時間を掛け、登りつめると無人。
ただ石積みに標識。
ごうごうと山頂の風が吹いているだけであった。
6時間以上も飲み食いせずに、反対側の村に降りて泊まった。
あれは案外あぶなかったのかも知れない。
 しかし見えないと言えば、このインターネット世界はすごい。
小さい隙間にとんでもない横丁がある。
そこに人がひしめいていることもある。
たった一文字違いの横丁が並び、それごとにびっしりと飲食店やバーが詰まっていたりする。
それも巨大である。
外からは覗えず物音ひとつしない。
入ると奥が深い宮殿であったり魔窟であったりスラムであったり驚くことがある。
その広さは横丁の間口とは無関係の大きさで、魔法のスペースである。
時には入るのに「呪文」が必要である。
杖で●●●●と数字を振ると、煉瓦の壁が動き出し、その奥にダイアゴン横丁が広がる。
とはいえ、そのすべての横丁を並べて見ることの出来る地図は存在しない。
昔の香港やモロッコのカサブランカのように嵌まり込んで掴むしかないのである。

               
             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」 2011年12月3日更新


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