アーサーおじさんのデジタルエッセイ506

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第506 仙人はいつでも仙人とは限らない


 世田谷の住宅街の普通の通りを自転車が走って来る。
なぜか目を引くのである。
乗っているのはサラリーマンでも女学生でもない。
半袖のアロハシャツのような簡単なシャツに半ズボン。
頭はピカピカに禿げている。
しかしなぜか耳の下から長い長い白い髭。
中国の仙人にしか許されないような有無を言わせぬ派手さがある。
誰もが気になる風体に違いない。
どうしても見詰めてしまう。
すれ違うと、その瞬間、彼は私の眼をじろっと見ていた。
これは、自己顕示心的な他者の注目確認の目である。と言えば、むしろ女性特有のものである。
街中であろうとせまい通りであろうと頑張った流行の衣装や化粧をした女性は、それなりにマーケットの効果確認の意識のためか、こちらの視線を見逃すことはない。

こちらの視線は必ず一瞬、追撃される。
「ビシッ!」孔雀が派手な羽を広げ、揺するのも異性を挑発しシビれさせるためである。
従って相手を十分に観察している。
相手がいなくて挑発などするわけがないのだ。
オスのヒヒが赤い唇を見せるのも相手を威嚇するのであり、相手の反応で調整して行うのである。
効果があればやめてもいいからだ。
さて、白い長い髭というものは、派手で意味ありげで、手間も掛かっているビジュアルなのだ。
自転車に乗っている彼も、ご自分の髭がちゃんと注目されているか気にしている。
すれ違う歩行者ごとにチェックする。
女性が通ればなおのこと。
しかし男性の目線も気にしている。
ああ、お化粧仕上げて出掛ける女性と同様に、仙人の髭もファッションだったんだ。
そういえば鼻の下の長い仙人が女性の裾を見ていて、地上に落ちたなどという逸話もあったなあ。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2010年8月6日更新


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