アーサーおじさんのデジタルエッセイ448

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第448 「禁じられた遊び」のこと


 1952年、アカデミー賞名誉賞、ベネチア映画祭サン・マルコ金獅子賞などを受賞した、白黒の映画「禁じられた遊び」が封切られたのは、僕が確か中学生のころだ。
ドイツ軍に侵略されたフランスの話。
両親と一匹の犬を戦争で失った女の子の話。
これは確か「文部省推薦」かなんかの映画であって、中学生の我々は仲間で見に行こうとしていた。
 親爺に映画に行くと言った。
「なんて言うタイトルだ?」
ぼくは、その返事に窮した。
「・・禁じられた遊び」
しばらくの沈黙の後、「あまり変な映画は見るなよ」と睨まれた。
とてもいやな瞬間だった。

そういえば、そのころ、銭湯の更衣室に『禁じられた恋の島』という男女の若者が上半身裸で見詰め合っているポスターが貼ってあったのを思い出す。
それは=成人映画=であった。
こんな記憶があるから、タイトルというのは重要だと思う。
少なくとも別のジャンルに入ると信じさせてはならない。
「おくりびと」の中で、主人公が新聞で「安らかな、旅のお手伝い」という求人募集広告を、旅行代理店のものだと思うところがある。
山崎努が「ああ、これは誤植だ」と言い、「安らかな、旅立ちのお手伝い」に修正する。
あんまり改善されたとも思えないが、いい加減なタイトルはひとの人生を左右することもあるかもしれない。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2009年5月17日更新


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