アーサーおじさんのデジタルエッセイ435

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第435 わたしもA定(食)症候群


 確かに依然よりは減ってきた傾向であるが、日本人のベースにはまだ潜在している思想に、この「わたしもA定症候群」がある。
1960年台頃にはピークではなかったか。
定義は、『ある小さな集団に、暗黙の社会的コードが存在するとき、全体の変化を最小化しようという力学が、その集団の支配的な人物の好みの方向へ向けて行われ、成員個人の意思を凌駕していく現象』である。
「おいいくぞ!」と部長が腕時計を指しながら立ち上がる。
すると係長が今気付いたように「あ!」と顔をあげ、壁の時計を見る。
そしてにこにことする。
「さ、みんなも昼飯昼飯」と促す。
部長はもう背広を背中に引っ掛けながら出口の方に向う。
ひとり書類を書き続ける女性社員がいる。
係長が小さな声で「さゆりさん・・・」と言う。
彼女が、これ仕上げますから、と言うと係長はジロリと彼女を睨み、アゴで『いいから!言うことを聞きなさい』と合図する。
そうやって部長以下全員がおひるに向う。
「どこにしましょうか?」と係長。「うーーん、こんな日だとミニマム亭の洋食はどうだ!」「あ、いいですね(昨日もそうだったな)。それ行きましょう!」と係長。
皆の顔を見る。
皆も頷く。

そうして若者が先頭に立ち、ミニマム亭の席を確保する。
店長が今日は何にしましょうか?と水のコップを配りながら忙しそうに尋ねると、部長が「オレはA定だな」と言い切る。
係長が「あ、いいですね(昨日もそうだったな)。
それいきましょう!A定」となる。
若者が「あ、じゃA定」このあと定義通りの現象が始まる。
「わたしもA定」「わたしもA定」。時々は「じゃわたしもA定」となる。
それがとても自然な60年台。
 こう書いてても、何かイヤになる。
高度成長期ってこういう日本人が支えたんだろうなあ。
大量消費社会を支えたんだろうなあ。

             ◎ノノ◎   
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2009年2月7日更新


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