アーサーおじさんのデジタルエッセイ431

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第431 目の前の異変


 不思議だが、そこで起こっていることの内容は分からず、その分量だけが分かる。
そんなことがあるだろうか?
 あるある、よく時代劇で岡引が「てーへんだ!てーへんだ!旦那、てーへんだあ!」と叫ぶやつがそれだ。
旦那は「なんだどうした?」と応えるがわけが分からない。
また、サスペンスでも見られる。
刑事が電話の受話器を取り上げて「もしもし早乙女警部?実は大変なことが分かりましてね・・」と言いながら場面は変わる。
なにが起こったの?
そう、間違いなく重要なことなのだ。
 でも、これはドラマの文脈だからそうだと言い切れるのであるし、続けて見ていれば必ず明かされる。
もし見損ねたのなら、あとで誰かに聞けばいいのかもしれない。
 ところで、私の前に一人の女性がいてパソコンを打っている。
このオフィスは対面式のX状になっているから実は、モニターと低いパネルの上方では、お互いの顔は正面から対面している。

彼女はキャリアの人らしく、いつも眉根にシワを寄せ、かなり険しい眼をしてモニターだけを睨んでいる。
あまり話し掛けやすくはない表情である。これが毎日である。
ところが、今日の午前中、モナリサのように相好が崩れ、眉根が下がり、ニンマリしている。
驚いてなにげなく観察した。
正面であるが、微塵もこちらに気付かない。
おそらくメールを読んでいる。
ニヤニヤ。
実はそれほどではないが、通常のPCに向う顔を知っている私には異常な信号だったのだ。
なんと和やかな顔つきだろう。
これは何か「てーへん」なことが起きているに違いない。
大変な分量。
それは確かに分かる。
でも絶対に分からない謎なのだ。
想像しても出てこない。
個人情報だし、訊くわけにもいくまい。

             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2009年1月10日更新


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