アーサーおじさんのデジタルエッセイ428

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第428 磁石と恐怖 


 世の中に不思議なものはたくさんあるけれど、磁石は人生で最初にぶつかる「不思議」ではないか。
どうして?
 科学で説明できるのに?
 科学で説明できるわけないじゃない。
説明できないから磁石と名付けて、当たり前にしてしまったのじゃないか。
ガルシア・マルケスの小説「百年の孤独」の冒頭に磁石が登場する。
それは魔術師が発明したのだとされていた。
 私の小さい頃は磁石は「馬蹄形」とされていた。
ここを握りなさいという感じで赤く塗ってある。
あれに紐を付けてズルズル地面を引き摺ると、砂鉄が棘のように磁石に立ち上がった。
 それを指でこそぎ落として集めた。
紙の上に落として、下から磁石を近づけると、砂鉄は再び棘になって踊り出した。
ただの砂のようだが、それを瓶一杯に溜めると黒い軟体動物が眠っているような気になった。
それからもっと強い磁力というものを知った。
自転車のダイナモを外して持ってくる子供がいた。
すごい。

バチンと鉄の扉に吸い付いた。
こんな力がどこから出るのか。
 私は今でも強い磁石を見ると捨てることができない。
机に貼り付けて集めてしまう。
何の役に立たなくとも神通力があると思える。
 でもあまりに強い磁石を握っていると心配になる。
体の中の鉄分がそちらに引き寄せられているに違いない。
血液に含有されている鉄分が、ものすごいスピードで指先に偏るのだ。
全身の鉄分は不足していくに違いない。
貧血の人は磁石を握ってはいけないと思うのだ。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2008年12月14日更新


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