アーサーおじさんのデジタルエッセイ410

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第410 「アガサの旦那さん」 


 ああ、面白いなあと思いながら、忘れかけているので今のうちに書いてしまおう。
アガサ・クリスティの自伝の中にあった「アガサの旦那さん」という遊びである。
彼女がまだ未婚で若いころ、友人達と遊んだゲームのことである。
パーティなどに出席していて、退屈な時に誰かが「ねえ、ねえ『アガサの旦那さん』をやろうよ!」と言い出す。
 この遊びが実に簡単でいて、奥深いものがある。
 そうするとパーティの会場を眺め回し、出席者の中からとびきり風采の上がらない男や、不潔そうな、あるいは見るのも勘弁してほしいといった人物を、誰かが探し出す。
そうして「決めた、あの方、ほら柱の横で喋り捲っているゴリラみたいな人!」「キャー、マジ!」と騒ぐ。要するに、彼がアガサの未来の旦那であることをみんなで想像してみよう、というわけ。

そこでルール(?)は出来るだけ、似つかわしくない人物、お断りしたいような男性を選ぶのである。
ここでは出来るだけリアルに想像することがゲームの醍醐味である。
 イギリスの貴族階級では実際に、彼女たちは若いうちから許婚として親から押し付けの結婚を求められたかもしれないから、こういうゲームは結構リアルな緊迫感があったと思う。
実際彼女は、24歳の時にクリスティという軍人と結婚をして14年後に破綻したのだ。
アガサの緻密な想像力は、若いうちから、こういう仲間の笑えるゲームの中で耕されていたのかもしれない。


             ◎ノノ◎。
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2008年5月10日更新


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