アーサーおじさんのデジタルエッセイ348

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第348 タコーンな人びと


  JRの改札口を抜け、人ごみをくぐるうちに激しいカスタネットの音が打ち鳴らされているのを聴く。
カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!
それは、床を打ち鳴らすヒールの音であったが、どうしても意味のある行為(アクション)に感じるのだ。
単なる物音ではなく、それは「聴かせる」音の範疇に入る。
とすれば音楽だろうか?
 スペインの一地方でジプシーが自然に作り上げたダンスが今では、スペイン全土の代表的な踊りのように思われている。
フラメンコダンスである。
このダンスにはちょっと特徴がある。
それは、フラダンスやサルサ、あるいは大抵の他のダンスと違って基本的に「笑顔」を見せないということ。
踊り子を見てご覧。
有名なダンサーほど、普通は眉間に皺を寄せている。
玉の汗を振り撒きながらまるで、踊りたくない、もう死んでしまう、といった風。
ほとんど苦悩の地団駄を踏んでいるのが分かる。

 この地団駄はダンスの必須項目であり、タコーンという踵の動きになる。
劇場演技もこのタコーンの音を出すために床には特別の板などを敷き詰めて行う。
その他、固いカスタネット、手拍子などが、重要なリズムとなる。
ギターだって、かき鳴らす、叩くと激しい。
爪なんて簡単に割れるから、日本のアロンアルファで防御する。
 このフラメンコは日本で異常に流行っている。
なぜか。
日本の都会の女性の心に響いたのではないか。
ヒタノ(ジプシー)の歴史的な苦悩と抑圧を振るい払うような激情に共感するのではないか。
なるほど、ストレスフルな毎日のカタルシスにはこんなダンスがふさわしい。
だとすれば、JRでのヒールも頷ける。
あのカン!カン!のリズムは何かの必死の訴えなのだ。


             ◎ノノ◎。
             (・●・)。

         「また、お会いしましょ」 2007年2月18日更新


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