アーサーおじさんのデジタルエッセイ304

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第304 飛蚊症


 何年もエッセイを書いていると、これは前に書いたテーマかもしれないと気付くことがある。

春を待ちわびる今時は、梅のつぼみを見て「それ」を書こうとすると、それは毎年、繰り返されていることだと気付く。

季節は繰り返されるのだから、仕方がないではないか、とも思う。

俳句を作っている人々もそうであったに違いない。

松尾芭蕉も、一茶も、あれ?なんか似たのがあったな、これ詠んだな。と。それでまた一工夫せざるを得ないというわけか。

 春は眠い季節である。春には限らないが。それは確か書いた記憶がある。

ハリーポッターの魂を吸い取るディメンターのしわざように記憶が失われる、などと。

 飛蚊症というものがある。目の老化や病気に伴って、視界の中にヒラヒラと小さな光りのような軌跡があらわれる現象である。

蛍のように引っ掻いた曲線で光って消えていく。

めまいのような気分である。網膜の疲労や病気である。

この季節には、それが書類の記録にもあらわれる。

会議のメモをとるノートに黒や赤のボールペンで、蛍の軌跡が書き込まれる。

ユラユラと虫が這ったような線がいくつも書き込まれる。

その瞬間、実は私はこの世の人ではない。

ディメンターに引っ張られているのであろう。

これを「飛文症」と呼ぼうか。




             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2006年3月5日更新


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