アーサおじさんのデジタルエッセイ299

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第299 ジョージア・オキーフの目


凍て付く大都市の朝には、その温度を示す現象がいくつかあるが、特に大きなものに空調施設による水蒸気の噴出がある。

町の通りならば人の吐く白い息やガラス窓の曇りがあるが、ここでは林立する高層ビルのスケールでそれが起こる。

地面から見上げたり、ガラスのパイプである直行エレベーターから見渡す、その巨大な剣山の頂点から、真白い雲が発生している。

風の動きに沿って、やや停滞したり立ち上がったりしながら、ぐわ、とアラジンのランプの入道のように膨れ上がる。

蒸気機関車の吐き出す煙のようでもある。

それはあちこちで立ち上がるので、都市のエネルギーを表現する象徴のようである。

このエネルギーを感じ取った人がいたのを想いだした。

1920年代、アメリカで有名であった女流画家、ジョージア・オキーフ※はそれまで花や田舎の自然を描いていたが、展覧会のために出てきたニューヨークで、この生き物の吐息を発見し、それを描こうとし始める。描きたいもの、驚いたものを描く。

素朴なリトマス試験紙のように。モチーフというものは、どこかにあるのではなくて作家の心の揺れで生まれる。

彼女の直裁な感性はその顔にも表れていて、晩年のプロフィールは、まるでクリント・イーストウッドのように精悍な男の顔をしている。

(※ジョージア・オキーフは1887〜1986の人)

                

             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2006年1月27日更新


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