アーサおじさんのデジタルエッセイ258

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第258話 思い出の複葉機


ゴムの動力で飛ばす模型飛行機。

小学校の頃はたびたびブームがあって、町のところどころにあるグラウンドには飛行機を持った子供たちが集まっていた。

竹ひごを蝋燭で焼き曲げて、翼の枠を作る。

紡錘形のバルサを竜骨にして翼の膨らみに作り込む。

薄い和紙を貼り、霧吹きで水を掛けて干しておくとやがてピンと張る。

翼と胴体にくっつけると巨大なトンボのような飛行機が出来上がる。

最初にお尻をつまんで、広場に押し出してやるのは、期待が張り裂けそうな瞬間である。

まだ、ゴムは使わない。ここで飛び方が悪ければすべてだめなので完全に調整をする。

尾翼、重心の位置、方向舵、上反角。

調整がうまく行けば緩やかな坂道を下りるように前方の土の上に着陸する。

やった。 

複葉機に憧れた。

飛行機のセットを二個買い込んで、改造飛行機を設計した。

翼を2枚重ねれば、もっともっと揚力が増して、飛んでくれるに違いない。

慎重に組み立てた。

テスト飛行でグラウンドに持ち込むと「わあ、すげえ!」と声が上がる。

「どこに売ってあるんだ」普通よりも重い。

お尻を握って、つう、と前へ投げて見る。

するとふわりふわりと、単葉とは格別に違う感触で浮かんでくれた。

それからゆっくりと地面に着地した。製作の喜びである。

さあ、ゴムを巻いてプロペラを動かす。

するとグンと前方に出、いきなり上を向く。

そして失速し、落ちてくる。

何度も何度も富士山を描くように、蠕動運動を起こし、落下する。

二枚羽根は揚力が強すぎてバランスが壊れるのだ。

そのころはうまく調整をすることが出来なかった。

記憶の闇吸い込まれて消失した私の複葉機は今、どこを飛んでいるのだろう。



             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2005年4月10日更新


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