アーサーおじさんのデジタルエッセイ198

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第198話 星ひとつ、星ふたつ


 ふと思い出す。学生時代に挑戦して実行したこと。まだ、文庫本が大量の流通商品になる前の頃で、「文庫」は文字通り、出版社の殿堂を意味していて、簡単に文庫発行にはならない時代であった。

そんな状況で、文庫の王座は「岩波文庫」であった。早い話、友人と、これを全て読もう、という話になった。とはいえ、大きすぎるし、資金の問題もある。神田に出掛けても、全てが見つかるわけもない。で、現実的なプランを考えた。

『星一つ』の本だけを完読することになった。星一つとは、★印が一つ付いている本であり、これは当時、「★定価50円」の意味であった。少しずつ、物価が上がり始めた当時、価格が変更される度に、在庫の値段が書き換えられない事情で、★の価格を、20円、30円、50円という風に変動することで、料金をキープしていたのだった。

文庫の厚さに応じて、★、★★、★★★の3種類があったと思う。まず、神田でできるだけ沢山購入した。そしてあとは徐徐に残りを探して読破することにした。おそらく、★一つは50冊程度だったと思う。そして私はそれらを読破したのだ。

当然ジャンルはいろいろ、なんでもありだ。歴史・文学、詩集から哲学、科学、理科系のドキュメントまで、古今東西の名作ばかり。現在では絶版になったものがほとんどだろう。

トルストイ=光あるうちに光の中を歩め。ツルゲーネフ=初恋。??=イギリスの衛生学。などの著作を思い出す。私は、実はお陰で何度も目の鱗が落ちた。『ピポポ・ポッポ・ポー!♪“アーサー”は、銀の翼を手に入れた。レベルアップ!』という感じ。

周辺の情報・出版物がゆっくりだった時代もいいものだ。僕は激流でなく、のんびりの小川で水泳を覚えることが出来たのだ。

             ◎ノノ◎   
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2004年2月2日更新


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