温泉日記27 田沢温泉 有乳湯 平成13年7月15日更新

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長野県田沢温泉・有乳湯(うちゆ) 平成13年 5月25日

島崎藤村が小諸時代にここを訪れ小説の構想をねったといわれ、「千曲川のスケッチ」に田沢温泉が描かれている。

古くから湯治場として温泉好きには知名度が高い。湯は役小角(えんのおづぬ)が偶然発見したと伝えられ、入湯しようとしたら白髪の老人が先に入っていて「この湯に入ると身体壮健、精神爽快にして、二百歳を越えても元気である」といって、湯の効果を説いたと伝えられている。

また、古来「子持ち湯」と呼ばれ、子のない婦人は37日入湯すれば懐妊し、乳の少ない婦人は27日で乳が出るようになるといわれる。共同湯の「有乳の湯」はここからつけられた。

田沢温泉有乳湯
共同湯「有乳湯(うちゆ)」の入り口


 泉質は単純硫黄泉で源泉温度は40.2度、湯船の温度はややぬるめ、無色透明で硫化水素の臭いがする。有乳湯の湧出量は毎分283リットル、PH9.3、容存物質228.1mg/kg、効能は慢性婦人病、冷え性、皮膚炎など、アルカリ性低張性泉。

 共同湯は男女別内湯各1つであるが、十分な広さの湯船に源泉掛け流しの湯が豊富にあふれている。また、階下には田沢温泉の歴史資料が展示されている。

有乳湯の湯船
湯は、もちろん飲泉できる。浴室内も清潔。

 田沢温泉は温泉旅館4軒、国民宿舎、ユースホステルの6軒からなる。山間の小さな湯治場であるが、木造3階建の老舗宿ますや旅館や、重厚な門構え、白壁の土蔵など歴史の古さがしのばれる。

 田山花袋の「温泉めぐり」には、
「保福寺峠、それは上田から松本に行く昔の街道のあった所だが、その峠の右の袂にある田沢温泉は、別所に比べて言ふに足りない程の小さな温泉だが、それでも、何処か静かな好い気分が漂っていて、後ろをめぐった山の高いのも好いし、街道の上にある往来の温泉場と言ふ形も好い。私は、雪に阻まれて、そこに一夜泊まったが、部屋から見える小さな渓(たに)のせせらぎに雪が白く積もって、水が際だって碧(あお)く流れているさまが好かった」
 とあるが、当時の旅館の数は5つ、それから80年後の今日でも6つ、湯治のための温泉場の伝統がいまでも受け継がれている。

田沢温泉地図

長野県青木村田沢

青木村役場観光課 電話0268-49-3131(代)

入浴料金:200円 AM6:00〜PM21:00

交通:長野新幹線上田駅から青木行きバス30分終点で、田沢温泉行きバスで5分。

車:上信越自動車道上田菅平IC→R144・R143経由(18Km)

食事は上田市内の「御蕎麦どころ草笛」(電話0268−24−8221)のざるそばとクルミおはぎがお薦め。ソバの量は普通盛りで都会の大盛りに相当し、昼は順番待ちの賑わい。


1992年現在の田沢温泉全体の湧出量毎分843リットル、源泉温度49.2度、PH8.8〜9.3。

大正12年全国温泉調査によると旅館5軒、年間入湯客数約15,330人。旅館の数は80年後の現在でも1軒ふえたのみ。

温泉作家 簾田彰夫(★★★)


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