アーサーおじさんのデジタルエッセイ599

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第599 リハビリ


 新聞に「リハビリ」という文字が見えた。
コラムのシリーズらしいが、何か気になる。
引き付けられるのである。
どうしてだろう。
 読んでいくと、血管の病気や脳の病気、その他の発作や大病からの回復、リハビリへの努力が連載で書かれている。
様々な病気のあとのリハビリの姿を取材して記事にしてある。
そうか、リハビリには「希望」が籠められているのだ。
 不思議なことだけれども、ときどき「自分はリハビリを迫られている」という気が起こるのである。
 それはなんだろう。ハリーポッターではないけれども、何か重大な事件のあとに、「記憶忘却魔術」を掛けられていて、その剥がれた記憶の傷跡がうずくというか、何か呼びかけが私にささやくのではないだろうか?
「私は、リハビリで回復しなければならない過去があるのだ」

 私は、なんだかそれを信じるのである。
?私は、羽をもがれた二級天使であった。
地上に落ちた時にそれはもがれた。
何回かの手術で今の普通の背中にしてもらった。
私は自分の背中を傷跡を鏡で見ることができない。
なんとかリハビリの力で新たな羽を生やして、とび立たねばならないのだ。
?私は、小さい頃に捨てられた外国人の子供であり、両親が健在なうちに探しだして会わなければならないのだ。
?私には、オリンピックに出て世界の頂点に立つ力があった。
けれども忌まわしい事故がその力と記憶を奪った。
少しずつでも回復させ、再び記録を更新して人びとを力づけなければならない運命である。
 ああ、どれなんだろう。
どうにも分からない。
私は過去と未来の両方を霧の中に見失っている登山者のようだ。
でも進まなければならない。
私はここにはいられない。
私はかつていた頂上に戻りたいのである。
霧の中でも足で探り、少しでも斜面があればそちらを上に進むしかない。
私は、いつまでも痛み、苦しむ。けれども「リハビリ」の過程にあるという、わくわくする希望が持てるのである。
          

             ◎ノノ◎
             (・●・)
               

         「また、お会いしましょ」 2012年8月25日更新


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