アーサおじさんのデジタルエッセイ55

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む

第55話 後悔の断片


今でも、失敗したと思う出来事がある。面白いアイデアをすぐに実行した若い頃のこと。
あるプロジェクトの上司の一人が、辣腕だが鼻息荒く、超傲慢であった。
次第に周囲から煙たがられ始めていた。
誰も進言する者がない。

僕は別の上司と策を講じた。
「飲みませんか?と誘っておいて、早めに始め、もうでろんでろんに酔って無礼講に持って行き、言いたいことを言う」というシナリオが出来た。

割烹の座敷で時計を見詰め「さて、始めますか」とばかり、僕はネクタイをだらしなく緩め、ビール瓶を2〜3本卓の上に倒した。
仲居さんが瓶を引こうとしたが、「いや、このまましておいてください。訳があるんです」と言った。
そして僕は座布団にしな垂れかかり、例の上司が現れた瞬間「遅い、遅い、もう酔っ払っちゃったっすよっ!」とばかり、「あなたは得意の前でも態度が悪い!」などと始めた。


まあまあと止めさせる振りもしてもらい、さらに進める。
「俺は悪いとは思わんが」と言う彼に向かって、「あなたのところの飼い犬は、鎖を外したら走って逃げ、2度と帰って来ないはずです」「あなたの顔を見た幼児は笑うと思いますか。泣いて避けて行きますよ!」と言った。
ほとんど本当のことだ。

でも本当のことでも、言うのは、少々考えたほうがいいかも知れない。

次の日、「昨日は酔った勢いで、大変失礼を致しました!」と謝ったが『本当の意図』は伝わらなかったようだ。
『あいつは俺の邪魔をする奴』と思っただろうか。
ちょっと今でも気になる。

             ◎ノノ◎。
             (・●・)。

  「また、お会いしましょ」    2001年4月23日更新


日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む