アーサーおじさんのデジタルエッセイ534

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第534 ラビリンスの顔


 デザイナー福田繁男(故人)の作品に、多面体というか、多世界体の構造がある。
これは物体が単一体ではないことを表現したもので、正面から見える形が上や横から見ると違う姿になるものである。
この原理の応用はNHKの2355などで、様々な角度で「2355」という数字が現われる仕掛けを見せてくれるものがある。
楽しい。
 簡単に言うと、「秘密が隠されている世界」の喜びではないだろうか。
 長いストーリーなどにもこの展開する秘密があると面白さが広がる。
「ハリーポッター」がそういう構造をしている。
第一巻で楽しかった様ざまな登場人物が、後の巻で展開し、新たな姿に拡がる。
たとえば第一巻で単なるデカかった飼いネズミが、第三巻ではハリーの両親を殺す手引きをした魔法使いの変身だったことが暴露される。
また第一巻で友人の妹として端役の少女が後半で重要な人となる。
膨大な登場人物の過去と親戚関係は複雑であり、正邪が絡み合う。
また、各巻に登場する魔法界の生物だけをまとめると別の一冊の本が出来るのだ。
このように作者の緻密な想像力はまことに層が厚いのが窺われる。
おそらくは多数の登場人物ごとにそのクロニクル(年代記)が構築されていて、それらが絡み合って全巻が生まれているのである。
このことがストーリーに多面性を与え、立体感を生むのだ。

 しかしながらそれは、ラビリンスへの入

り口でもある。
アスカバンの牢獄に投獄されていたのは善良なハリーの名付け親だけではない。
その他の囚人を中心にクロニクルを編めば、そちらが主人公の魔術物語が生まれてしまう。
マルフォイを主人公にすれば狡猾で憐れで精悍な青年の物語が生まれる。
 ところで我々のリアルな人生も厚いクロニクルで出来ていて、悪人を決めつけることが難しい。
こういうストーリー生成の構造が世間にも働くと、連続殺人犯にファンが出来たり、オウム教の幹部が英雄化されたりするのでもある。
誰かが誰かを裁くことの難しさがある。あるテロリストとブッシュ大統領とでは、どちらが人を多く殺したであろうか。
どちらが英雄であったのだろうか。
そして『神』は、いったいどちらの味方なのだろうか、と矛盾した考えに陥るのである。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2011年3月12日更新


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