アーサーおじさんのデジタルエッセイ528

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第528 ご機嫌いかがですか?


「元気ですか?」と訊かれる。電話やメールでも訊かれる。
英会話では「ハウ・アー・ユー?」スペイン語なら「コモ・エスタス?」などと訊かれる。
きちんと応えることになっている。
「とても、元気です。あなたは?」
これが正式。
病気で入院していても、「元気?」と訊かれたら、「うん、元気。今入院してるんだ」などと、言うかもしれない。
しかし「質問」に答えるのならそうでもないなあ、と思うこともある。
 体調不良だったり、寝不足だったり、ひどい不安や、悲しみでいっぱいだったりしているが、特に説明したくもない。
「儲かりまっか?」なら「あきまへんなあ」が挨拶らしい。
「元気でっか?」「あきまへんな」。
 元気なんかじゃない、と言いたくても、実はよく原因が説明できなければ、「うん元気」と力なくこたえるかも知れない。

 元気なのか、元気じゃないのか?
 土曜日、あるJRの駅で降りると、やけに天気がよく。
駅前に並べられたベンチに沢山の人が座っている。
すぐそばにはバス停がある。
別にそうする必要は無かったのだけれど、ふとそこに座ってみた。
様々な人が人待ちをしたり行きかったりしている。
太陽が温かい。
のんびりしてみると何かを思い出す。
なんだろう。ちょっとした幸せ感である。
昔、冬の晴れた日にした日向ぼっこだろうか。
ああ、瓦屋根で寝ていた猫はこういう時間を過ごしていたのだ。
昭和の前半のことだ。もっこりした雲が出て陰ると、本来の季節の冷気が身を震わす。
また太陽が顔を出す。温まる。
「ああ、しあわせな気分」
 そう思ったとき、なぜか物悲しい気分も流れ込んできた。
何がそんなに悲しいのか?
まるで川べりに臨時で作られた露天風呂のように、冷たい水と温かい湯が不規則に入れ替わる。
 幸せはそれに似ている。
「あ、冷たい」という驚きの中で、ゆるりとお湯が混じる変化。
それが繰り返される。
「元気ですか?」と問われても、「イエス、ファイン!」と親指を立ててみせる程、ではないこのごろが過ぎているのである。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2011年1月29日更新


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