アーサーおじさんのデジタルエッセイ493

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第493 読破地層 


 あ、今日は連休明けの木曜日じゃないか!では、エッセイ書かなきゃあ。
えーと。
            * * * * *

 朝からいつものカフェに入って、鞄の中から読みかけの本を開く。
読み終えて閉じようとすると、「読破地層」に気が付いた。
これは洋書なので厚くて、ざっくりと断面が白い食パンのような美しい色をしている。
そこに挟まれたしおりの位置で左右は全く色が違うのだ。
つまり右側は白く、読み終えた左側は(洋書はこちらが前)グレーがかった絵の具を塗ったようになっている。
不思議だなあ、どんな絵の具を使えばこんな色が出るのだろうか?

この顔料は手垢なの?
それとも酸素や紙折れの屈折?
はっきりと使用前、使用後という差が、樹木の年輪のように、あるいは火山性大地の地層のように見える。
空気に一定の時間さらされると、変質するのかもしれない。
色相もやや変化しているからだ。
 昔これがいやで、なるべく手垢が付かないように、そしてあまりページを開かないように読んでいた。
しかしそれでも、地層は現われた。
シャーロック・ホームズには「Aさん、あなた昨日は、○○を157ページまでお読みになりましたね」とばればれである。
 しかしその後、その地層がむしろ達成感のようで気に入って、わざと荒々しくゴシゴシ指で触りながら読書をして、その地層の進展を楽しんでいたこともある。
こうやって人生は色付き、進展していくのだ。死後に脳を解剖して、「この方は、56歳で勉強をしなくなってますね。前頭野が半分白いですから。あ、小脳も72から白いな、寝たきりになったかな」なんて、いずれ診断される時が来るかもしれない。

             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2010年5月8日更新


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