アーサーおじさんのデジタルエッセイ473

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第473 昔、地球の図鑑が好きだった 


 ふと思い出した。幼い頃は様々なものに興味が持てた。
感度が高かった。
気持ち悪かったのは、内臓を描いた図鑑である。
まるで、隠していて時々出して楽しむ甘いお菓子の箱のように、引き出しに仕舞われた人体の図鑑は、片目を細く開けてそっと見る「多様な魅力」の図鑑であった。
あの緑色や赤色に塗り分けられた臓物、目玉全体の有り様。
こんなものが自分の身体内部に納められているのかと驚いた。
でもどうしてカラフルな内臓が恐ろしいのだろう。
カラフルな花畑や女性の衣装には同様の恐怖はありえないではないか。
 これはおそらく人は身体内部の「隠された目玉」で、内側をいつも「見ている」からに違いない。
その情報が時々意識の方に送られているに違いない。
 こういう情報は、一方で生命的に重要な情報である。
従って「美しい」と思うこともあるのだろう。
ひとつ間違えれば一瞬で崩れる数式のように美しく、脆い。
幼い者の人生にプログラムされている青春の芽生えや、いつか行く死への情報が隠されていたのだ。

 さて、地球の図鑑である。
これもカラフルで断面図や解剖的な図が満載である。
地面には幾重にも地層が隠れ、見えもしない大地の内部にはマグマが蠢いている。
そこから様々な鉱物がギラギラと生まれる。
割ると巨大な歴史の果てから、古代生物が化石で現れる。
深海には恐ろしい生き物が生成を繰り返す。
これが手に取るように示されている。
子供である私は、地球の微小生物なって、その地表を観察する。
空間と時間を縦横に異動しながら、地球という生命に触れるのだ。
謎と実存の入り混じった世界。
人体と地球は、幼い自分にとって等距離のエンターテイメントであった。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2009年12月13日更新


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