アーサーおじさんのデジタルエッセイ468

日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む

第468 あいさつ勝負に勝つということ 


日本人の挨拶についてーーなんて、こんなことを言うのも、違う国での挨拶を知ったから言う根拠があるのです。
 日本人は毎日に淘汰される習慣の傾向として「挨拶を減らそう」としていることが分かります。
オフィスが大きくなったり、IT化したりしていう段階で、明らかに挨拶をしなくても済むのです。
もっと露骨な場面ですが、コーヒーショップやマクドナルドで、客が「こんにちは」とカウンターの女性に挨拶しているのを見ません。
正確には目を合わせるのも稀のようです。
まるでじっと目を見てはいけないみたい。
私の住んだV市では、すべての客がまず「こんにちは」とカウンターの人と互いに挨拶を交わします。
それをせずにいきなり注文をするのは考えられない不穏な感じを与えます。
これはスーパーのレジでも同じ。
レジの人と目を合わせずに計算することはありません。
またレジが終わり、注文の品を受け取る客は「どうもありがとう、ではまた」と挨拶を100%していました。
タクシーに乗った時、まず行き先を告げて冷や汗を掻いたことがあります。
運転手のおじさんは、振り返るとニコリとして私に「こんにちは」と言ったのです。
ああ、日本人はいやな印象がするのだろな。

 話が逸れました。
日本人は挨拶を省略しているので、だんだん親しくない人同士ではオフィスでの挨拶をしなくなります。
廊下ですれ違う人には下を向いて誤魔化します。
 さて、実はこれは相当昔の話ですが、それに過剰に便乗している人を見ると確かにいやです。
朝から挨拶をすると平然と無視(しかと)されます。
別の同僚から「ああ、あいつは絶対に挨拶を返さない!」と怒りの口調で知らされました。
それに憤った私は、戦いに挑んだのです。
それから毎日、朝一番に彼を見かけると、大きな声で「おはようございます」と言うことにしました。
決して目を逸らさないでやるのです。
当初は偉そうにして廊下をすれ違っていた彼が、数週間もすると、私を見ると焦るのが分かりました。
彼が廊下を歩いてくると私は顔を輝かせ、一歩手前で立ち止まり「おはようございます!」と声を掛けます。
彼の目が泳ぎます。
あれほど傲慢な自信に満ちていた表情が、いまや怒られる前の少年のようでした。
僕は半ばあきらめつつ、それを繰り返しました。
それは長い間、彼から様々ないじわるをされたという同僚のための報復でもありました。
そうしてさらに何日も過ぎたある朝、「おはようございます」という声に遅れて、彼の唇がモソモソと動いたのです。
それは音声を伴わなかったのですが、明らかに「ぉ・は・ょ・ぅ」という口の動きだったのです。
期待していなかった私は「やった!」と思いました。
それからは、彼が挨拶をしようとすまいと、気にならなくなったのでした。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2009年11月8日更新


日本鑑定トップ | デジタルエッセイ目次 | 前に戻る | 次へ進む