アーサーおじさんのデジタルエッセイ464

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第464 宇宙飛行士のアリス


  睡眠時の夢は、いわゆる考える脳(前頭葉)ではなく、むしろそれを底辺で支える生命的な原始的な、小脳、脳幹などが強く働く現象である。
従って再現されやすいのは、気持ち、感情である。
ストーリーを再現するように「意識」するには困難を伴うことになる。
 さて、宇宙ステーションでは様々な実験が行われる。
無重力状態で水滴がどう形成されるか、蜘蛛はどのように巣を形成するか、植物はどちらに向かって芽を伸ばすか。
現在はほとんどが無重力への探索である。
歴史的に、人類は重力状態でしか生存しておらず、そこで遺伝子を進化させてきた。
だから無重力というのは人体に何をもたらすか謎なのである。
筋力は落ちる。
定期的な睡眠はうまくいかない。
首の周辺は太り、足は細る。
引力がない状態では、血液、リンパの流動も調子が狂う。
食べ物も飲み込んだら自力で嚥下せねば、降りてはくれないのだ。
頭脳の働きもボーッとしてくる。
決して居心地のいいものではない。
ラーメンが丼の中で湯気を出し、納まっていてくれるのは、なんと奇跡的に安心なことだったのだ。 

さて、無重力状態が長く続くと、人の夢に影響を与える。
生存のパラダイムが変貌する。
内臓の変化に関わる
脳幹の新情報はもちろん、世界の情報も変化するだろう。
上下がファジーになった夢の世界はどうだろう。
亡くなった祖母が逆さまになって現れても不思議はない。
足で物を踏みつけると、自分が反動で飛んで行く。
夢の世界もごちゃごちゃに霍乱される。
これで人は初めて「アリスの国」を感情で体験できるかもしれない。


             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2009年10月10日更新


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