アーサーおじさんのデジタルエッセイ458

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第458 愛されたい理由


 どんなにパソコンが人の頭脳に近づいても、到達しえないのには理由がある。
人の頭脳は完全ではないからだ。
パソコンは完全なプログラムを追い求めるかもしれないが、「完全なひとの頭脳」という到達点はたぶん存在しない。
 昔「鉄腕アトム」を読んでいると、ロボットについてこんなくだりがあった。
お茶の水博士が「アトムこそが完全なロボットじゃ」と言うと、カーテンの影から出てきた男が「そうだろうか?
人間なら悪の心を持っているはずだ。
しかしアトムには悪の心がない。だから完全じゃない」と。
 小学生にはなかなかこれが理解できなかった。
本当にすべての人間は悪の心を持つのだろうか?

 神様は人間をプログラムするときに、一旦は完全に作ってみたのかもしれない。
しかし、妙なことに気が付いた。
完全にしてしまうと、一人で生きていけるので、自ら無駄な生命活動を停止するのだ。
20万年ほど悩んだ神様は、プログラムの一部を外して、それを持つ別の個体を作ることにする。
ただし、別の個体にも欠陥を作っておく。
そうすると人間は、他者に自分の不完全な部分を求めるように接近することが分かった。
しかし、3千年もするとどうにか二者は一体化して完全になり、活動を停止してしまった。
何度やっても同じことだった(39回やってみた)。
 そこで神様はもう少し複雑な組み合わせを考えた。まず数を増やしたのだ。
そうしてどの組み合わせでも決して完全にはならないように、プログラムの欠陥を操作した。
そのおかげでどの人間も、他者を探しながら生きるようになった。
そして人口と活動は活発になったが、その過程で、反対に他者を嫌ったり、殺しあったりすることが起きた。
 自分のプログラムとは違う他者を通して、プログラムの完全を求める行為を愛と呼び、それに至る強引な取捨選択を悪と呼んだ。
どうも発達したのは悪のほうだった。
愛のほうは、相変わらず単純でいつも不完全だった。
 今日も渋谷の交差点は巨大な人の群れが接近して行き会う。
互いのプログラムの欠陥を埋めようと、別のプログラムの人間を求めて彷徨う。
大きな音をたてたり、様々な衣装や色彩で身を包んだりしながら、そのうちに自分が何をしているか分からなくなる人間も増えてきた。
神様はちょっと疲れて、居眠りをしているに違いない。

             ◎ノノ◎   
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」 2009年8月31日更新


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