アーサーおじさんのデジタルエッセイ376

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第376 めだかの悲劇


  秋の気配がやってくるころから、住宅街の路地に、事故車のように仰向けになりすべっていく蝉が目に付く。
苦しい声を出しながら、羽根を空回りさせている。
まるで壊れたゼンマイが空から落ちてきたようでもあるし、平家の落人のようでもある。
子供たちの夏休みは蝉と共に終わり、夏はこうやって終結する。

 思えば、夏の初め、蝉は大声で自分の来訪を、自らの「捕食者」である小学生男子に告げ、滅びるのだ。
同じように、小川のメダカも麦わら帽子の小学生や、孫たちに掬われる。
都会でのメダカと蝉は、そもそも悲劇を生きていく生物のようだ。
いつの日か、進化した蝉は茶色の保護色に加えて、決して泣き声を出さなくなるのではなかろうか。
 
             ◎ノノ◎。
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2007年9月9日更新


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