アーサおじさんのデジタルエッセイ252

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第252話 陽はまた戻る


 啓蟄ということば。ぬくくなるこの季節に、カエルやヘビや虫たちが土の中からゾロゾロと出てくること。

私にはヘビが「ハクション!」とくしゃみをしている姿が浮かぶ。

社員食堂の窓から広場を見下ろす。

あ、ビルの影を縫って広場に太陽が戻って来た。

 そこにはスペイン広場のようなしゃれた階段があり、しばしば人が集まる。

しかしそこは冬の間、閉ざされる。何本ものビルの影が交互に太陽を奪ってしまうのだ。

私も昼食後スウェーデン人のように日光浴をしようとしたが、冬の到来と共にどこかに消えていた。

それが帰ってきたのだ。

人間も、啓蟄のヘビやカエルのように戻り始めている。

人間も虫の一種なのだ。

ルクソール神殿では、春分の日、秋分の日の正午に、太陽の光が狭い階段の奥まで差し込む瞬間が来る。という。

厳粛な神殿の厳格な設計でそれが計算されているというのだ。

その瞬間、何かが目覚める、のだろうか。

私たちの広場にも、ルクソール神殿の光が届いた、ということか。



             ◎ノノ◎
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」  2005年2月26日更新


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