アーサおじさんのデジタルエッセイ228

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第228話 オフィス・海の家


雲が空に浮かんで流れている。風がときどきそれを揺らす。

真上にやって来ると、黒い大きな影が従ってついて来る。

あたり一面は夕方のように変身する。

おーっ、と露出した腕を風が冷やす。一雨でも来るのかしら。

という間もなく、また太陽がぎらと顔を出す。額や背中が痛い。

そう、この、時間の経過が空気に刻まれる感覚は、まぎれもない浜辺の感覚。

さて、この週は、のんびりである。電車はすいているし、オフィスは夏季休暇中の人が多いので、机に座っている者もまばらである。

始業時間になっても、なにかまったりした空気が通う。

めずらしく天井を見上げる。

長い大きなオフスには、同じ大きさ、同じ形状の天井がずっと向こう側に伸びて広がっている。

蛍光灯の川が2本地平の果てまで延びている。それは、見上げる夏の空の流れる雲のようでもある。

さてもオフィスは「海の家」のよう。

これで、シャカシャカとかき氷を削る音、風鈴の音、波の音でも加えたら絶好調。

もう何年も出掛けていない海を思い浮かべながら、誰かがたたくパソコンの音を聴く。

それは夕立の雨粒のような音である。


             ◎ノノ◎   
             (・●・)

         「また、お会いしましょ」2004年8月29日更新


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