日本鑑定トップ | 目次 | 戻る | 次へ

第18話 日本のほぼ真中


 霞ヶ関の「運輸省」に行った。朝9時。警備員にチェックを受けながら1列になってぞろぞろと入る。待ち合わせには早過ぎるので「ドトールコーヒー」か「スターバックス」でもあればと、うろうろするが、官僚のおじさん達が「売店」に長い列を作っているだけである。

 警備員に訊けば、日比谷まで出ないと喫茶はない、ここにもあると指をさす。行って見ると倉庫のように薄暗い廊下の奥に袖看板があった。イタリアンレストランとかいう看板。地方の連絡船の波止場の食堂に似ている。
 「あ、お客さん」という感じで、白い服のお兄さんが、何にしますか、モーニングですか?という。僕は興味をそそられて、そのモーニングは何ですか?と訊くと、コーヒーにトーストにサラダにゆで卵だ、という。

 来た来た!懐かしい日本文化だ。花柄のビニールクロスを掛けたテーブルに座り周囲を見回す。地下の配管が露出した壁。首を振るナショナル?の扇風機。金属カバーの一本一本には黒い埃が纏わりついている。中では「シェフ」がバットほどの巨大なしゃもじを掻き回している。大量のカレーかミートソースを作っている。

 シェフの一人は客席に座りタバコを吸っている。オリーブオイの匂いが充満する。かっこいい!掃除する前の「バグダッドカフェ」のようだ。これは文化の凍結保存現象だろう。

 文化人類学でも民俗学でも、文明に曝されない僻地に、昔の文化が良く残されるという現象がある。過去の伝統を正当にキープする条件は、淘汰や改善から隔離されることである。地方の正統的方言や行事はブラジル移民の中に記録されたりしている。

待ち時間を過ごし、会議のために6階にあがると、その窓からは千代田区の皇居の美しい緑がわがもののように広がっていた。

             ◎ノノ◎
            (・●・)

         「わたしもタフだなあ。」 2000年7月11日


日本鑑定トップ | 目次 | 戻る | 次へ