アーサーおじさんのデジタルエッセイ152

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第152話 春のピピピピピ


朝の出勤は、10分ばかりの住宅街の道のりを、駅までジグザグに歩いている。

商店街を真っ直ぐに通って行く方法もあるのだけれど、いつの間にか距離の短い細道をかいくぐるルートが選択されたのだ。

裕福な豪邸の玄関はワンルームの部屋程もあったり、朽ち果てた板壁の家屋は果たして人間が住んでいるのかと疑うほどの荒れ様だったりと、住居表示は近くても、トランプを切るようにランダムに、違う世界が並んでいる。

でも、驚いたことに、春には一斉に「ネットワーク」が露出する。

梅の花である。家計も思想もコミュニケーションも違うはずのそれぞれの庭先に、可愛らしく梅の花が膨らむのである。

それは角角に顔を出していて、毎朝の標(しるし)となる。歩くたびにそれぞれの花の形、枝の形が楽しめて、花地図として繋がるのだ。

花の可愛らしさは、なんとその持ち主の“有り様”を全く受け入れず、勝手に等しく美しいのだから。こればかりは、大理石の玄関の横の手入れの行き届いた木よりも、毛の抜けかかった老猫の終世の古い家屋の裏庭の一枝のほうが、美しく輝いていたりする。

それはメシヤの出現が、たとえ貧しい町、身分の低い村でも、差別なく現われるのに似ているかも知れない。

春の小振りなメシヤ達は、誰の“啓示”で目覚めたのだろうか?

突然に一斉に開くのだ。

通信カラオケが、一斉に新曲を取り入れるように、ここにも見えないソフトが信号を出していなければ、梅は咲かないだろうと、僕は考えている。

    

             ◎ノノ◎
             (^●^)

         「また、お会いしましょ」


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