アーサーおじさんのデジタルエッセイ137

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第137話 黄色い雪


すっごい、大きな仕事が入ってしまって、2週間ばかり、朝から追われ、深夜まで追われ、翌日のカレンダーに入ってから帰るような日々が続いた。

コンペ(企画競争)なので負けられない、ということなのだ。社内では毎日のように圧力が掛かる。いよいよクライアントに提案する日、12名ばかりで、我が社の玄関を出発した。

タクシーに4人ずつ同乗して、霞ヶ関に向かう。車上でも企画書を開き、赤鉛筆でチェックをする。なにせ、挨拶のあと、自分が最初に10分ほど喋らなければならない役割なのだ。(※相手は17人くらいでした)あー、もうすぐ、終わればちょっと楽になるなあ。

タクシーの助手席から、見えたのは皇居のお堀の、紅葉だった。桜の葉の紅色や銀杏の黄色だった。

「あっ、いつの間にか、秋が来ていたのだ!」知らなかった。ほとんど外を歩いたりしていなかったから、世間から外れていたから、見ることが出来なかったのだ。

いきなり川端康成の「トンネルを抜けると、雪国だった。」という気分。タクシーの窓がトンネルの形に思える。

「雪」は目に沁みる贅沢な黄色だった。同行の新人が、後に社内で「驚きました。外は紅葉だったんで!」と話していた。ふうん、おんなじトンネルにいたんだなあ。


             ◎ノノ◎。
             (・●・)。

      「また、お会いしましょ」 2002年11月23日更新


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