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第13話 猫地図〜フック船長〜


 フック船長(仮名)はオレンジ色のトラ猫で、自宅のほとんどすぐ前の古い木造家屋の放し飼い猫である。後ろ足が一本不自由なのと、不敵な表情のせいで私は「フック船長」と呼んでいる。

 彼はたぶん行動範囲は広くないのだが、前に書いた犬、ロダンとは2つの違いが際立っている。紐がなくて自由なのと、道路にも縛られない道すじをとれるということだ。

 彼はいくつかの出勤先を持っており、そのひとつが町内のごみ捨て場と我が家の窓の下である。ここで「食」の一部と「昼寝」をするのだ。 人の地図では道路はそれに沿って移動するルートであるが、フック船長が移動するとき、その道路をまっすぐ歩いているのを見たことがない。

 たいてい道路脇の塀の上を歩くか、斜めに横切って植え込みに飛び込むものだから、彼の世界は高低差が豊かであり、うねりながらしかも狭い範囲をびっしりと塗りつぶすように利用しているのであろう。

 通る人々を、上から見たり下から見たり、時々は塀の上で寝ている時、通行人からからかわれ眉をひそめてご機嫌悪そうな目をする。愛想の無い奴だ。

 このごろ猫が増えた。いずれも大リーグの選手のように太っていて、ガムを噛んでいる(様に見える)。打席を去るとき、ペッと唾も吐く。 残業帰りの暗い道ではトラ猫はどれも同じに見える。

 どれが「フック船長」なんだろうか。わかんない。僕が心配しなくとも、勝手に生きている。心配して声をかけても、眉を顰めるだけなんだ。

             ◎ノノ◎
            (・●・)

 「また、お会いしましょう」 2000年6月7日


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