アーサーおじさんのデジタルエッセイ129

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第129話 頭蓋骨のプール。


文章を書くということは、世界を切り取るということ。そして世界というのは、まぎれもなく『自分の頭の中の世界』だから、言い換えれば、自分の脳内を切り取ることに似ている。疲れていると、混沌としてその作業はあまりうまくいかない。明晰すぎても、ちょとダメ。たぶん外界の刺激が強く入り過ぎるからだろう。

湯船に浸かっていて、ゆらゆらとゴミが浮いていることがある。沈んだり浮かんだりで、だんだん気になってきて、手で掬おうとする。湯の中でスルッと逃げる。どうもうまくいかない。

もうちょいと言うところで生き物のように、指の間を逃げる。あれが、脳の中の思考を捕らえる感じに近いかな。何度やっても逃げられる。ところが、何かある発想、切り口が閃いたとき、これまで掴めなかった脳の思考が掴めるのだ。

頭蓋骨のプール

それは、ユラユラしていた脳の内容物がいきなりゼリー状に固まるかのようだ。もう、スプーンでそっくり掬えるのだ。

ゼリーは透き通ったブルーで、底まで美しく光る青色ダイオードの発光体である。

スプーンに掬うと、その凹みの上でプルッ、プルッと動いている。切り取られたものは、いとおしく、美しい。それが文章だ。

             ◎ノノ◎。
             (・●・)。

       「また、お会いしましょ。」 2002年9月29日更新

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