アーサーおじさんのデジタルエッセイ117

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第117話 村のおきて


どんな厳しい掟があろうと、それが村のことであれば問題ない。年貢をとられても、コケにされても、「村人」には同じ太陽が照る。作物に水を遣り、草をむしり、収穫を目で量る。畔の木々に付いた実は食べていいし、飛んで来た鳥は可愛く鳴いている。その日々を統べているのは、庄屋でも代官でもない。太陽と風である。村人は太陽と話をし、ご褒美をもらっている。そのあとの話である、代官に睨まれるのは。

都市のサラリーマンは、太陽からは切り離されて、蛍光灯と空調で「快適」にされているが、それは「代官様」のコントロール環境である。小鳥はやって来ない。「庄屋と代官」の声が、スピーカーや文書できこえてくる。煽られたり

脅かされたりして、こころの中はその噂で価値付けられ、日々を塗り潰すことになる。太陽のように照らしているのは会社の方針と上司の評価である。

村人はその生涯を太陽から離れて暮らすことはないが、サラリーマンはある日、空調の部屋を去る時が来る。終わった映画館のようにドアの外へ出る時がくる。

その時、本物の太陽の声を聞く練習を積んでいなかったら、聞くことが出来ない。人間の掟を超えた、生命のおきてを生きていないと、作物を育てられないし、小鳥の止まる枝を見つける耳もない。僕達の住所は、大自然国、生物県、哺乳動物区、ホモサピエンス町 1丁目8番地の○○社宅A棟−13号である。


             ◎ノノ◎     
             (・●・)

         「また、お会いしましょ。」 2002年6月30日更新


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