アーサーおじさんのデジタルエッセイ115

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第115話 花の形


通勤の沿道に花が咲いている。今ごろ一斉に黄色い小振りの花が開き、一斉に散り始めている。もっぱら気付くのは朝だが、朝は朝で急いでいる人ばかりだから、誰も見向きもしない。

むしろ歩道に延びかかる花は人が歩くのに邪魔であろう。

しかし、実に可愛い。小さな盃のような丸いくぼみを南にある歩道側に向けて、ロックコンサートの入場者みたいに揃って訴えて来る。

その内側はピュアに黄色い。花の名は知らない。

横には大きな樹木があって、その足元にも同じ花は広がる。

しかし、樹木の影では、黄色い花は、こちらを向いていない。

一つ一つがばらばらに、統一感を失って咲いている。

そうだ、光を探しているのだ。

樹木の影では、木漏れ日が移ろうので、花の方向も定まらない。

衛星放送のアンテナに似ている。

電波の来る方向に向かって全てのアンテナが揃っている。

しかし、電波が反射する地区では、アンテナは場所場所で向きがまちまちになる。

マンションの影になった向日葵のように、光を「探して」いるのだろう。

あんなに多くの人々が暮らしている社会でも、実は生命は同じ方向に伸びようとしているのかもしれない。

光が見えている間は、人も迷わない。

しかし、物の影、情報のノイズの影に入ると、とたんに混乱して自分を見失う。

広々とした野原ではそんな、迷った花など一輪も見たことがないのに。



             ◎ノノ◎
             (・●・)

      「また、お会いしましょ。」 2002年6月16日更新


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